「感情の劣化」は「身体性の劣化」だ。

インターネットメディア上で、「劣化したおじさん」という言葉に触れる機会がここ1ヶ月くらい急に増えました。

「劣化したおじさん」と言って、ああ、、、と通じるくらいには多くの人に分かりやすい言葉だと思います。

そもそも「劣化したおじさん」は、何が劣化しているのでしょうか?

もくじ
感情が劣化したおじさん。
感情の劣化=身体性の劣化。
劣化した人が、多様性やイノベーションを阻害する
「今まで通りのことをより多く頑張る」以外の方策が取れないリーダー。
世代間連鎖という要因。
感情・身体性の劣化を予防・解消するには?

感情が劣化したおじさん。

それは「感情」となるのでしょう。宮台真司氏が兼ねてから「感情の劣化問題」と説いた通り。
宮台氏の定義では、感情の劣化とは「真理への到達よりも、感情の発露の方が優先される感情の態勢」のことです。

自分と異なる意見に対して無条件に噴き上がる、相手の好き嫌いが意思決定に大きく影響する、都合の悪いことを突き付けられると逆切れする、自分の不機嫌な気分を解消するためにハラスメント的なコミュニケーションを人に対して行う、スポーツで「強くなる」という言葉の元に体罰を正当化する、、、などの態度が典型でしょう。

「劣化したおじさん」にこうした態度が良く見られることは、多くの方が同意されるところだと思います。「劣化したおじさん」=「感情が劣化したおじさん」です。

感情の劣化=身体性の劣化

この「感情の劣化」は、突き詰めて考えると「身体性の劣化」です。

平たく言うと、感情が劣化した人は、ちょっとしたことで身体が条件反射的に緊張し、頭に血が上る、パニックする、固まる、キレる、不機嫌になりやすい、、、という身体になっている。

自分の周りで「感情が劣化した」と思われる人の身体を、少しじっくり観察してみると分かりやすいです。常時身体を硬く緊張させていたり、息苦しそうだったり、顔の筋肉を不自然に固めていたり、肩肘張ってガニ股で歩いていたり、、、普段から常時身体が緊張してしまっているのが分かると思います。

普段から緊張しているものだから、ちょっと心身の緊張が高まるような事に出会うだけで、緊張の度合いが許容範囲を超え、感情のコントロールが効かない状態になりやすいのですね。脳・神経などの知識がある人にとっては、「戦うか逃げるかモード」に入りやすい身体になってしまっている、と言ったほうが分かりやすいかもしれません。

念のために補足しますが、「身体性の劣化」というのは、別におじさんのみに起こるものではありません。男女問わず、年齢問わず、身体性が劣化した人は沢山居ます。

それでも、おじさんがとりわけ問題になりやすいのは、権限や発言力を持っている比率が他の層より高く、周囲の人々への影響が大きいから。クソ上司やクズ政治家が周囲の多くの人をうんざりさせているからこそ、「劣化したおじさん」という言葉が多くの人々の関心を引きやすいということです。

劣化した人が、多様性やイノベーションを阻害する

感情・身体性が劣化した人は、ちょっとしたことで感情のコントロールが効かなくなる。

このことは、自分と異質な存在・考え方への許容度が低い、という意味でもあります。

自分と異質な存在・考え方への許容度が低い人は、多様性を受け入れることができません。そして、冷静な熟議を通して複数の意見・価値観など統合し、新たな変革を引き起こす、イノベーションを起こす、ということも非常に困難です。

ひどい場合には、周囲が多様性を受け入れようとしていることに文句を言ったり、新しいものが創造されることを妨害しようという振る舞いをすることすらあります。

感情・身体性が劣化した人というのは、多様性・イノベーションの阻害要因にもなるんですね。

「今まで通りのことをより多く頑張る」以外の方策が取れないリーダー。

このタイプの人がリーダーになるとどうなるか?

・自分は変わるつもりはない
・部下や周りが頑張って変革を引き起こすべき
・ただし、その変革は私の利益・好み・価値観に合わねばならない

という構えを持つ傾向があります。

そのリーダーの下に居る人々にとって、これは大きな重荷です。

「異質なものを許容できない人から、変革しろ!と駆り立てられる」のって、ダブルバインドなんですよ。
変革しないと「変革しろ」と言われる。
いざ変革しようとすると、許容範囲が狭いから「その変革はダメ」とハネられやすい。
どちらにせよ変革は起こらず、組織・コミュニティは衰退し続ける。

こうしたリーダーのもとで最後に残りやすい方策は何か?

「今まで通りの方策を数多く頑張ってこなすこと」です。

最近 「高度プロフェッショナル制度」 なんていう「定額働かせ放題」制度が経済界から要請されていますが、この制度も「感情の劣化=身体性の劣化による無能」がイノベーションではなく「沢山頑張ること」を労働者に求めたことにより生み出された制度なのでしょう。

身体性の劣化というのは、無能なリーダーという存在にも深くかかわる問題なんです。

世代間連鎖という要因。

感情・身体性が劣化した人が生まれる大きな要因は、世代間連鎖です。

感情・身体性の劣化は、子供、部下、生徒など、後の世代に連鎖しやすいのですね。

感情・身体性が劣化した親が引き起こすのが「毒親」「虐待」などの問題。
感情・身体性が劣化した上司・経営者が引き起こすのが「パワハラ・セクハラ」「人事・人間関係のパワーゲーム」「過度な長時間労働」など。
感情・身体性が劣化した教師・指導者が引き起こすのが「過度な生徒の抑圧」「体罰による支配」などです。

これらの問題に共通することは、子供・部下・生徒などを、慢性的に心身両面が緊張した状態に長期間置くことです。

慢性的に心身両面が緊張した状態に置かれた期間が長く続くと、その人は、いつも緊張しているのが当たり前、、、という身体になります。先に述べた、常時身体が緊張している人と同じような身体=感情・身体が劣化した身体になってしまうのですね。

常時身体が緊張した人が、他の人の身体をも緊張させていく、、、というのが、この連鎖の正体です。

この世代間連鎖がいつ始まったのか?

おそらくは戦前~明治時代まで遡る必要があるでしょう。
ここでは、詳しい言及は控えます。

感情・身体性の劣化を予防・解消するには?

それでは、感情・身体性の劣化を予防したり解消したりするには、何をすれば良いのでしょうか。

時間と手間をかけて、身体をゆるめることに尽きます。

・自分の身体が緊張して感情的になってしまった時に、それに早期に気づき、身体をリラックスさせることを通じて、感情を落ち着け、冷静さを取り戻すことを繰り返す
・普段から身体をゆるめることを習慣付け、身体と感情のゆとりを増やす

の2つが、特に有効でしょう。

既に感情・身体性が劣化した人が、それを解消するためにどのくらい時間がかかるか?

大きな変化を出したければ、年単位の取り組みが必要だと思っておくと良いでしょう。

また、やるなら、若いうちにやったほうが良いです。歳を重ねるほど、自分に染みついた心と身体の習慣を変えて行く手間は大きくなります。

「知・情・意」=「頭・胸・肚」のバランスは、人生に色濃く反映される。

人間の精神の働きを3つに分けて考える方法の一つに、「知・情・意」という分け方があります。

夏目漱石の「草枕」の一節にも出てきますね。

智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。

現代風に直すと、、、

頭でっかちだと 理屈っぽくて嫌な感じになる。
人に対する情が豊かだと、人の気持ちを伺って振り回されてしまう。
自分の意思を強引に貫徹すると、それはそれで窮屈に感じる。
とにかく人生ってなんだか生きにくいねえ。

くらいの意味でしょう。知・情・意、どこに偏っても生きづらい!とも読めますね。

なので、自然な流れとして、知・情・意のバランスが大事ですよ、、、という話になるわけです。

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そこで役に立つのが、知・情・意のバランスは、身体と密接な関係がある!という知識です。

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