人間の精神の働きを3つに分けて考える方法の一つに、「知・情・意」という分け方があります。
夏目漱石の「草枕」の一節にも出てきますね。
智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
現代風に直すと、、、
頭でっかちだと 理屈っぽくて嫌な感じになる。
人に対する情が豊かだと、人の気持ちを伺って振り回されてしまう。
自分の意思を強引に貫徹すると、それはそれで窮屈に感じる。
とにかく人生ってなんだか生きにくいねえ。
くらいの意味でしょう。知・情・意、どこに偏っても生きづらい!とも読めますね。
なので、自然な流れとして、知・情・意のバランスが大事ですよ、、、という話になるわけです。
でも、バランスと言っても、ちょっとピンと来ない場合も多いですよね。
そこで役に立つのが、知・情・意のバランスは、身体と密接な関係がある!という知識です。
知=頭(脳)、情=胸、意=肚(腹)と理解しよう。
知・情・意という3要素は、身体の頭(脳)・胸・肚(腹)の働きに置き換えると理解が容易です。武道をやっている方は、それぞれを上丹田・中丹田・下丹田と呼んだりもしますね。
頭・胸・肚、どこの働きが強く、どこの働きが弱いかで、知・情・意がどのようなバランスで働くかは決まります。
頭(脳)が良く働く時は、知が優位に立ち、情・意が相対的に弱くなります。
胸が良く働く時は、情が優位に立ち、知・意が弱くなります。
肚(腹)が良く働く時は、意が優位に立ち、知・情が弱くなります。
知(頭)・情(胸)・意(腹)のそれぞれが優位に働く時に起こる精神・感情の働きは、おおまかには下の図のようになります。全部を網羅したわけではありませんが、なんとなく全体の雰囲気はつかめるのではないでしょうか。
注意しておかないといけないのは、いずれかが強く働くといっても、それは状況によりプラスにもマイナスにもなりうる(陰・陽の関係)ということ。
知(頭)が優位に働くことは、論理的で賢いというプラスの要素をもたらしてくれる反面、状況によっては頭でっかち、理屈っぽいというマイナス要素にもなりうる。
情(胸)が優位に働くことは、人に対する共感力・ワクワクを楽しむ心などにつながる一方で、時として人の気持ちに振り回されたり、享楽的になり過ぎることにもつながる。
意(肚)が優位に働くことは、堂々とした落ち着きや、熱意・行動力につながりやすい一方、頑固さ・頑張りすぎにつながることもあります。
プラスに働いている時は良いのですが、マイナスに働いた時には「兎角に人の世は住みにくい」となるわけです。
人によって、知(頭)・胸(情)・肚(意)の働きには傾向がある。
人ごとに、知(頭)・情(胸)・意(肚)のうち、どこが強くてどこが弱いかにはだいたいの傾向があります。
そして、その傾向というものは、良きにつけ悪しきにつけ、あなたの人生のさまざまな側面(行動・習慣・考え方・好みなど)にかなり色濃く反映されているものです。
論理的・理知的であること(知・頭が強い)が強みになっているけれど、理屈で解決できないことが受け入れられず、清濁併せのめない(意・肚が弱い)ことで人付き合いや仕事の可能性を狭めてしまうとか。
ワクワクすることが大好き(情・胸が強い)反面、ひとつのことに専念することができず(意・肚が弱い)、大きなことを達成できないとか。
強い意志を持って仕事をがんばることはできる(意・肚が強い)けど、楽しむことが苦手で、孤独を感じがち(胸が弱い)とか。
なかなか解決しない人生の課題・悩みの背景に、こうした傾向が働いていることも非常に多いです。この場合、知・情・意のバランス=頭・胸・肚のバランスのどこが崩れているのかを探り、心・身両面のバランスを取っていくことが解決の糸口になりやすいです。
今後の記事では、実例なども紹介していきたいと思います。お楽しみに!