前回の記事では、
「自分のネガティブな感情も大切ですよ!」
というお話を書きました。今日はその続きです。
世間に出回っている「自分を前向きにさせる」「目標に向かって突き進めるようになる」メソッドの中には、ネガティブ感情を無視して、ポジティブな面だけを強化しようとするものも多いですが、これってかなり問題だなあと思うのです。
ポジティブになる方向ばかり追いかけて、ネガティブを無視するのはリスクが大きい。
何が問題か?というと、自分を見失う危険性が高いのです。
ポジティブな面ばかりを強化しよう!とすることで陥りやすい、ヤバい状態というのがあります。
それは、「地に足が着かない誇大妄想状態」。妙に気が大きくなって、全能感・無敵感・根拠のない自信を強烈に感じている状態です。心理学ではこの状態を「自我インフレーション」と呼んだりします。
けっこうヤバいんですよ、この状態。本人はハイになっていて気持ちいいし、行動力や自信などもどんどん出てくるのです。でもそれと引き換えに、冷静に自分を見つめたり、心の底で感じている違和感を感じたりする能力が失われて、自分を見失ってしまうんです。
下手をすると、
・「自分には可能性がある!」と言って、次も決まっていないのに会社をやめてしまう
・いきなり人間関係の全リセットを始めちゃう
・あやしいネットワークビジネスにいきなり手を出しちゃう
などの突拍子もない拙速な行動に出てしまうことすらあります。
それで全て上手くいくなら良いのでしょうが、この状態は、大失敗をしたり、人に迷惑をかけたりする可能性がかなり高いです。
また、この状態で突き進んだ上で大きな失敗をした時は、すごくハイだった精神状態が、あっという間に強力な落ち込み・絶望に転化する(躁状態が鬱状態に転ずる)こともあるので、この状態に陥ることは避けたいところです。
「地に足の着かない誇大妄想状態」「自我インフレーション」を引き起こしやすい方法は?
自分のポジティブ面ばかりを強調しようとして、ネガティブ感情にフタをするようなメソッドが、「地に足の着かない誇大妄想状態」「自我インフレーション」を引き起こしやすいです。代表例としては、以下のようなものが挙げられます。
大きな声で自分を鼓舞する
世間に出回っている、こうしたハイな状態を作るメソッドの代表例は、「大きな声で自分を鼓舞する」というものです。「私はできる!」とか、「私は○○な人間だ!」などの声を、ネガティブな気分が無視できるくらいの大きな声で口に出すことによって、気分をハイにして、自信・行動力・思い切りなどを引き出そうとする方法です。
アンソニー・ロビンスが紹介している「インカンテーション」と呼ばれる方法も、同種のものと思っていいでしょう。
この方法、実際ハイになれてしまうのですが、その反面「ハイになりすぎて自分を見失う」というリスクも伴いますので、かなり注意が必要です。
自分の心身の状態をモニターすることに慣れていて、ハイになりすぎた時に気分を落ち着けることができる人以外は、控えたほうが良いでしょう。
自分に語り掛ける時(アファメーションを使う時)は、声のボリュームは適度に抑えたほうが、反論としてくる自分の心の声などに気づきやすいです。そしてそれは、自分の内面にある抵抗に気づき、それを解消したり、上手く折り合いをつけるきっかけになります。
大きなゴールを掲げて頑張ることばかりを強調して、それに反発する心の声に耳を傾けることを否定する
自分が望む大きなゴールを掲げることは、それだけで人間をハイな状態にする効果が高いです。でも、ハイになり過ぎると、それに反発する心の声に気づく感性が鈍ります。
そのため、大きなゴールを掲げる時ほど、それに反発する心の声に耳を傾けることが重要になってくるのですが、そうした心の声を「ネガティブなもの」として切り捨て、耳を傾けないようにすることを勧めるようなアプローチも世間には多く出回っています。
こうした方法も「地に足の着かない誇大妄想状態」「自我インフレーション」を引き起こしやすいもの。リスクの大きい方法と言えますので、取り扱いには注意したほうが良いでしょう。
「地に足の着かない誇大妄想」「自我インフレーション」に陥ることを避けるには?
「地に足の着かない誇大妄想」「自我インフレ―ジョン」に陥った時には、何らかのサインが日常生活の中で出てくることが普通です。
典型的なサインを「自分自身を見失いかけている(何かズレているところがある)時のサイン。」でいくつか挙げてありますので、このあたりに気を配ってみるのが予防策になるでしょう。
それでも、最近地に足が着かない状態になっている、気が大きくなり過ぎ?という状態になってしまったらどうすれば良いのでしょうか?
身体のコンディションをチェックして、落ち着きを失っているようなら身体をゆるめる!というのが有効な対策の一つです。
頭に血が上っていないですか?呼吸は落ち着いていますか?身体はリラックスしていますか?ヤバい!と思ったら、一度立ち止まって、身体をゆるめることに時間を割くと良いでしょう。
身体がリラックスすると、ハイになりすぎた気分を落ち着けていくことが出来ます。気分が落ち着いてくることで、自分の足元を見つめなおし、今やっていることはおかしくないか?このまま進んだ時に、自分にとって大切な何かを失ってしまわないか?など、自分を省みる能力も戻ってきますよ。